2023年5月20日(土)、滝野川事業所にて第58回自立支援講座を執り行いました。
今回の講師はフロンティアリンク株式会社キャリアサポート事業部本部マネージャーの佐々木一周氏。『お子様のこれからの可能性について』と題したパワーポイントを使い、〝就労〟をテーマにお話をうかがいました。
佐々木氏は現在、就労移行支援事業に携わる一方で、放課後等デイサービスで勤務されたご経験もあります。
放課後等デイサービスは特別支援学校の生徒も支援学級の生徒も通常級に在籍するグレーゾーンの生徒も同時に存在する環境です。
移行所に限らず、放課後等デイサービスに通う子どもたちの将来の社会参加の形についてお話をうかがえたらというねらいがありました。
前半はパワーポイントを使用した講演形式。後半は質疑応答を中心とした座談会形式です。
・高校卒業後の福祉サービス
グループホームなど、生活訓練で集団生活や特性の受容を図る段階があり、その後就労継続支援から就労移行支援といった段階を経て一般企業での就労を目指すことを企図された制度設計になっている。
就労継続支援はA型とB型が存在する。
就労継続支援B型は福祉施設に近く、給料を稼ぐというより居場所としての側面が強い。そのため雇用契約はないが、勤怠の安定しない段階の利用者でも所属できる傾向がある。業務内容もいわゆる内職に近いものが多く、工賃として時給200円程度となる。
就労継続支援A型はB型と異なり雇用契約を結ぶ。そのため最低賃金が保障されるので月給7、8万円ほど。額面からも理解できる通りフルタイムでびっしり働くというわけではない。体調や勤怠の安定が重要になってくる。
就労移行支援は、一般企業への就職に向けて訓練する場所。最大2年間という利用年数の期限があるが、自治体によって移行所の再利用についての対応が異なるので自治体への確認が必要となる。
・就職に近道はない
障害者雇用促進法もあり企業側は一定人数障害者を雇用しなければならない。特例子会社をはじめとした一般企業への就職もある。
業種としては作業系が多く、他にはホテル、清掃関連など。学校が会社に対してのコネクションを持っているとスムーズに進むが、採用枠が限られている。同時に業種も本人の希望を叶えるものがあるとは限らない。
・就活について
応募書類を作るにあたって志望動機の理解や面接対策。本人が企業に特性や配慮を伝えることは難しい。
本人や家族の力だけでまかなうことは大変だ。ハローワーク、就労支援機関、就活エージェントなどの活用が重要になってくる。
どれだけのサポートを受けられるのかというとハローワークは相談支援員によって対応が変わってくる。さらにハローワークに登録された企業しか紹介できない点も重要だ。企業側は求人数に対して膨大な量の応募をさばききれないため、移行所やエージェントに情報が集中する場合もある。つまりハローワークで公開されていない求人がある。
就活エージェントは求人を紹介することで手数料を得られる仕組みなので、本人の希望に叶ったものをどれくらい紹介できるか未知数なところがある。
・移行所とは
就労移行支援事業所。ビジネスマナーやパソコンスキル、作業系も含みながら働くための訓練をする。
基本は通所型だったがコロナ禍を経て在宅訓練もできる移行所も増えている。在宅でパソコンができない場合は、自宅で行える作業系の仕事もある。
ハローワークに出ない求人が移行所に来る理由は、企業側としては移行所で訓練を受けているという安心という担保が欲しい。
移行所としても利用者に対し、「こういう風にしたら長く働けるよ」といった具合にアドバイスをすることができる。
さらに定着支援サービスといって、就労後半年間、相談に乗ったり企業と本人の間に入って合理的配慮の交渉をしたりするサービスもある。
その先も不安であれば福祉サービスとして就労定着支援事業所の利用をすることもできる。
・質疑応答
〝特支高等部と職業技術科支援校の就職率の差〟〝移行支援事業、いつから通えるのか〟 〝自立度の高くない子どもの就労について〟〝定着支援中に挫折してしまった場合〟〝定着支援と試用期間〟など多岐に渡る質問が挙がりました。
〝最近の業種や新しい仕事内容について〟という質問ではデータ入力の仕事の具体的な話も出てきて、郵便番号だけ延々と入力する仕事や住所の番地だけ入力する仕事も存在する話をうかがえました。
〝その方(子)のために適正と判断ができる事業所を見分ける方法〟についての質問では、見学と体験が何よりとのことでした。こればかりは本人と支援者の相性もあるので、雰囲気に合うかどうかなど、実際に足を運んで本人に適したところを探すことが大切かもしれません。
〝ご家庭や放デイでできる支援〟についての質問では、日頃から本人を観察しコミュニケーションをとり、何が好きか何に興味を持っているかを把握し、集団生活の中で特性をいかに受容するか。どういうときにつらくなったりパニックになったりしてしまうかを見つけ、周りから声がけして本人の自覚を促していくことが大切とのことでした。
何より佐々木氏が「お困りごとや不安をうかがった上で、ご本人の利益になることしか支援しない」と仰っていたのが印象的です。
理事長からも、障害者の就労について、先人たちの開拓してきたけんもほろろの歴史があって、当法人でも〝話します。自分の仕事のこと〟など、以前から障害者の就労について取り組みをしてきたこと。就職したで終わりではない人生を豊かにするという意味での就労を目指していること。何より 「時代が変わっていることを信じて、元気出していきましょう」とのお言葉をいただきました。
講座終了後も佐々木氏への質問は続き、来場されたみなさんももっと聞きたいことがたくさんあった様子でした。
知的だから働けないではなく、知的でも受け入れられる環境がある企業を見つけるためにも社会原子につながって相談し、活用し慣れることが重要だと感じました。
(指導員:磯貝佳史)