本年度第5回目、通算35回目の自立支援講座の第5回、通算35回目の自立支援講座が、3月10日に滝野川文化センター(東京・北区、滝野川会館内)で開催されました。今回のテーマは、「失敗例に学ぶ就労継続のヒント」。二人の講師をお招きしました。北区の「平成24年度地域づくり応援団事業」の助成を受けた本講座も、今年度はこれが最後です。
最初の講演は、株式会社D&I代表取締役社長の杉本大祐氏。社名のD&IはDiversity(多様性)とInclusion(融合)の頭文字を取ったそうです。企業の障害者雇用促進と障害者向けにビジネスマナーを身に付けさせる教育事業を主に行っています。
杉本氏はまず、障害者雇用において企業を取り巻く状況を説明しました。平成25年度より障害者の法定雇用率が引き上げられ、民間企業ではこれまでは従業員の1.8%だったのが2.0%となります。また、法定雇用率に満たないため納付金を課せられる企業の範囲も、従業員201名以上から101名以上なるため、中小企業での雇い入れが本格化してきているそうです。
次に就労に必要なビジネスマナーとして、①あいさつ、②身だしなみ、③約束を守る、の三つを挙げました。そして、就労までに身につけておきたいこととして、①一人で通勤ができる、②仕事に集中できる、③自立できている、の三つを挙げました。
続いて、失敗に関しての話がありました。一つは、最近、就職率100%の特別支援学校が幾つか出てきていて、それ自体は素晴らしいことだが、一方で、退職者も結構いたりするという。また、すごく我慢して働き続けてストレスをため込んだ結果、知的障害に加えて精神障害も起こしてしまうケースもあるので、休むことは“悪”とされがちだが、長く働くためにも大事にすべきだそうです。
企業にはもっと障害者を雇用してもらうため努力してもらわねばならない、その一方で、障害者側にも一人の労働者として、本人の努力や周囲のサポートが大きく必要だと筆者は感じました。一般的な就職活動においてもそうですが、採用がゴールではありません。長期的な期間、安定して働くことが重要となります。例えば家庭の問題で言えば、親離れ子離れの問題があるそうです。障害をもつ本人が自立をするということ、何かトラブルが起きた時にどのような対応を取るか、問題を家庭だけにとどめておかず、職場や地域とのコミュニケーションを通して、本人の就労継続に向けた努力が必要と感じました。
後半は、社会福祉法人あかねの会で理事長を務めている吉田由紀子氏。練馬区内においてグループホームの運営や療育相談、移動支援を行っています。前回のグループホームの講座の時にも感じましたが、やはり障害者にとってのグループホームはちょうど今、ホットワードだと思います。定員を超え待機されている方もいるほど人気を博しており、グループホームに入り、生活をする方が家庭だけでなく本人にとってもメリットが大きいのではないかと感じました。先ほどの子離れの問題で言えば、グループホームに入所していれば必然的に家庭と離れて生活することにもなりますので、仲間との共同生活を通じて十分解消できますし、離職率増加を食い止める効果も発揮するそうです。
就労が続かなかった例として吉田氏は、①夜更かしなど生活面の乱れ、②注意されることに馴れていない(ちょっと注意されていかなくなる)、③職場での孤立化(一人で仕事、一人で食事)の三つを挙げました。こうしたことを解消するのにグループは大きな役割を果たすそうです。
お二人のお話を聞いて、直接伺うことはかないませんでしたが、それぞれ障害者福祉の担い手の問題は抱えてらっしゃるのではないかと感じました。障害者をサポートするにはほぼその人数だけのスタッフが必要だと思いますし、グループホームのケースでは、ほぼ24時間体制のサポートが必要かと思います。いかにやりがいを持って取り組むことができるかというのもひとつのカギとなるかと思います。
私自身、就職活動をしている身で、弟に障害がありますが、本講座においても自らの将来像を深く考えさせられました。やはり一番近くにいる障害を持つ兄弟姉妹が、何かしらの形で障害者福祉に寄与していくというのもひとつの選択肢だと思いますし、そのような環境ができるのであれば素晴らしいことと思います。
当然まずは自らの社会人生活を送っていかなければならないと思いますが、その中で今後も少しでも勉強レストランそうなんだ!!の活動をお手伝いすることができればと考えております。こうやって若い者でも今回のような講座にスタッフとして参加できることに感謝です。今後ともよろしくお願いいたします。(川村泰彬)