2014年2月23日、本年度4回目、通算39回目の自立支援講座が、東京・北区の赤羽文化センター第二視聴覚室で開かれました。今年度最後となった自立支援講座のテーマは「グループホーム入門~グループホームとは何か、その現状~」。電通育英会の人材育成活動の平成25年度助成事業として最終回です。講師は、荒川区にあるNPO法人みんないっしょの世話人を務める白桃敏司氏。参加者は、当初想定していた以上、ほぼ満席状態でした。講演は午後2時過ぎ開始。司会は当NPOで学生スタッフの一人として活躍している吉野翔子が担当しました。
東京の大学を出て、特別支援学校の教員をしていた白桃氏。55歳を機にグループホームの世界に入り、現在2つのグループホームの運営に関わっています。当日の講演では、グループホームとは一体何なのか、そして白桃氏のグループホームに対する考え方についてお話していただきました。
まずはグループホームの成り立ちについて。グループホームができる以前は、まず「施設収容の時代」。個室がなく24時間一人になれる時間がない。プライベートというものがない。それではいけないと「地域で暮らすということを大事にしよう」との機運が生まれたという。そして、グループホームの日本での先駆的実践例として、近藤益雄氏の「のぎく寮」「なずな園」や、池田太郎氏の「信楽成年寮」などを例が紹介されました。
グループホームの考え方・思想自体が深まってきたのはいつ頃のことでしょうか。驚くべきことに、ヨーロッパでは日本の100年以上前、18世紀にはグループホームは当たり前になっていたといいます。
その根底にあるのは「ノーマライゼーション」だそうです。ノーマライゼーションとは、誤解を恐れずに言えば「普通化する」ということです。では、普通化とは一体なんなのでしょうか。そこには2種類あります。一つは「インクルージョン」。マイノリティをマジョリティに「加えていく」という思想です。もう一つは「メインストリーミング」。障害者を世界の「主流」にしていく、という思想です。このようにしてヨーロッパではグループホームのような思想が深まってきたそうです。
上記のようなヨーロッパの支援実践。この思想が日本に伝わってくると、前述した「施設収容の時代」にあった問題点を解決する試みが実践されていきます。
では、グループホームにはどんな取り組みがあるのでしょうか。白桃氏はここで、北区と荒川区のグループホームについて詳しく紹介しました。それぞれの内容は、知る機会が少なく、私たちには大変貴重なお話でした。
完璧なグループホームのソフト面についての定義は実は難しいそうです。というのも世話人の考え方によって大きく変わるためで、「グループホームというのはこういうもの」ということがなかなか言えないそうです。しかしそれが逆に、グループホームのいいところでもある白桃氏は話します。
白桃氏は「グループホームとは『法に位置づけられた福祉サービス』。サービスということは道具。道具は、それをどのように使うかを考えます。使い方が決まっているのではありません。場合によってはこういう使い方にしてくださいという要求が出来ます。曖昧ということは、利用者側が使い方を決められるということを気にしていただきたい」と語り、さらに「支援は絶対一人ではダメだと思う。なぜならその人とそりがあわなかったらおしまい。だから、世話人や法人なんかを批判するだけじゃなく、一緒につくりあげるようにしてほしい。」と続けました。支援者と利用者が一体となった支援の形を提示しました。
約1時間の公演のあと15分の休憩をはさみ、質疑応答を1時間弱行い、4時20分にこの講座は終了しました。
知的な障害を持っている人が成人し、自分の生活ができたとき。このときにあるのがこのグルームホームです。行政だけでなく支援する私たちも、このことについての知識を深めれば、生活の一つの選択肢として提示したりと、支援をよりよくできると私は思います。
グループホームに限らず、支援に責任ややり方を全て任せるのではなく、利用する側も「一緒に考える」。利用する側と利用される側。両方が協力した支援の形が大切。本当にたくさんのことを考えさせられた講座でした。(早大、増田直友)