第60回自立支援講座『てあわせ表現ワークショップ』を11月25日に滝野川西ふれあい館で実施した。

講師はNPO法人みんなのダンスフィールドの高嶋柚衣さんと水村麻理恵さん。

参加者は放デイを利用する4名の子どもと、その保護者3名の合計7名。

 

〝てあわせ〟とはみんなのダンスフィールドが大事にしている身体表現のひとつで、年齢も性別も障害の有無も問わず誰でも参加できるインクルーシブダンス。決まった振り付けを持たない即興ダンスだ。

8月に夏休みの運動レクとして体験プログラムを実施している。

子どもたちは、高嶋さんや水村さんと初めて会う子も多く、緊張したり照れたりしていた。

 

準備運動で筋を伸ばす中で子どもが何気なく発した一言からワークショップは開始。

初めて会う人とも会ったことある人ともハイタッチで改めて挨拶を交わし、和やかな空気ができあがっていく。

 

続くストレッチは目を閉じた状態で行った。

筋肉や関節を伸ばすことより、普段抑圧されて縮こまっている心を伸ばすことに比重が置かれている。

 

てあわせの実施では、決まった振り付けを持たないが故に、振り付けのあるダンスに慣れている子にとっては戸惑いの多いものになった様子だ。どうしても正解の動きを探してしまう。正しいとされる動きが存在し、それに則った動きをしなければならないはずだという前提が、日常の中で規律訓練的に習慣化されていることが伺える。

一方振り付けがないからこそ思い思いにのびのびと表現することができて楽しかったという声も聞かれた。

見学していた保護者も誘い、その場にいる全員で踊った。

保護者同士も含めて代わる代わる踊ることで、年齢も性別も障害の有無も問われない場というものを、瞬間的だとしても実在させることに成功している。

 

新聞を使ったクリエーションでは、ファシリテータの持つ新聞に自分自身がなるというものを行った。

〝新聞になる〟ことは現実的に不可能なことなので正解はない。新聞になりきって動くしかないわけだが、このときどんな動きをしても他者から「間違っている」「ダメ」など叱責を受けることはない。

その人が思う新聞の動きを表現することに、それぞれが集中している。それだけで、その場に存在するすべての人が肯定される。

自己肯定感が大事だと喧伝されるが、自己肯定感の実際は、単に自己都合そのままのわがままを肯定するということではない。良いところも悪いところも持った自己が存在しているという現実を肯定することだ。

上手にできない・人よりできないといった直視したくない現実さえも、自ずから在るがままに肯定できなければ自己肯定は成立しない。

 

最後に参加者に感想を伺うと子どもたちから「楽しかった」の声。

一方で「難しかった」という言葉も聞かれて、正解の振り付けが存在しないが故の居心地の悪さを体験していることが看て取れた。

保護者からは「ほっぺが痛くなるくらい笑った」「久しぶりに童心に返って楽しかった」などの声が聞かれ、楽しさの延長上にある自己肯定や安心して過ごせる居場所の創出に指先が触れた手応えがあった。

 

理事長からも「子どもたちの楽しかったの言葉は本当に嬉しい」とお言葉をいただき、その一言を聞けただけで準備をしてきた甲斐があったと万感の思いだった。

子どもたちが笑ってくれるのは私のジョークが面白かったからではなく、一緒に過ごすその場に安心しているからだと聞いたことがある。

楽しいだけで終わらない。社会参加し、自立を支えるための場を創出する方策を今後も模索していきたい。

(児童指導員:磯貝佳史)