2023年7月15日(土)、滝野川事業所にて第59回自立支援講座を執り行いました。

講師は就労継続支援B型事業所りんりんりんの施設長、伊藤麻美氏です。

りんりんりんを運営するさざんかの会とは、以前の自立支援講座でも関わりがあり、『話します自分の仕事のこと』でワークハウスペガサスを取材させていただいています。

りんりんりんでは現在も勉強レストランそうなんだの卒業生が働いており、就労継続支援B型事業所について、さざんかの会とりんりんりんの取組みについてお話をうかがいました。

前半はパワーポイントを使用した講演形式。後半は質疑応答を中心とした座談会形式です。

 

まずはりんりんりんを運営するさざんかの会の沿革から。元々療育に取り組んできた公益社団法人発達協会が母体である経緯から病院との連携も密である。

赤羽エリアを中心に働くことを支える部門と生活面を支える部門それぞれに対応した就労移行所やグループホームを運営している。

元々の療育を利用していた子どもたちが成人して働く場所が必要になったところから就労継続支援B型事業所は作られた。りんりんりん以外にも就労継続支援B型事業所を2つ運営しており、〝ひとりひとりの自分らしさを支えるために〟というストレートな法人理念を反映しているように感じた。

 

就労継続支援B型事業所は就労移行支援事業所と異なり利用機関に制限はない。そのため一般企業に就職したい人もいれば、このままB型事業所を利用し続けたい人も共存する状態だ。

北区には21ヵ所の就労継続支援B型事業所がありサービスの内容も事業所ごとに個性があり多様である。一般企業での就労が現時点で難しい人が働く経験を深める場として活用されている。

 

りんりんりんではお弁当やお菓子の製造販売を行っている。

食品事業を選んだ理由は、工賃の向上と食を通して地域とつながること。そして何よりB型事業所を利用する方たちが栄養バランスの摂れた十分な食事をできていない実情があったからとのこと。一日に一食くらいは自分たちで作ったバランスの良いお弁当を食べてほしい思いがあったとのこと。

基本的には月曜から金曜まで、休憩一時間をはさんで9時から16時まで働くが、日数や時間の融通は効く。

王子特支からの紹介が多く現利用者の8割が卒業生だ。北区のB型事業所も高齢化してきている。

 

りんりんりんでの作業は大きく分けて三種類。お弁当作りとお菓子作りとその他の軽作業・事務だ。

メインであるお弁当作りではスライサーで野菜を切ったり注文数の確認をしたり、コーヒー豆を挽いたりいろいろな工程がある。

お弁当の献立は日替わりなのでマニュアル化しづらいが、色つきクリップや、シール、係ごとのバッジなど色を起点にした構造化で利用者が混乱せずに一緒にお弁当作りができるような工夫がされている。

献立は専属の栄養士が考えているが、ハロウィンやクリスマスなどに利用者主導で考案した献立のお弁当を作ることもある。

献立を考えて作ったものを食べてもらえる喜びや、意外と野菜を切ることに延々と時間がかかることなどを考慮すると、料理における嬉しさの網羅と負担をきちんとカバーした取り組みであると考える。

 

また野菜を切る際に使用する補助具や、職員が変わっても指示が変わらないように単語や手順を統一するなど構造化以外の工夫にも余念がない。

 

お菓子製造販売ではお菓子作りの要である計量や梱包も行っている。

割れやすい繊細なクッキーを丁寧に梱包することはもちろん、賞味期限のシールを裁断し貼り付ける作業も行っている。

利用者の一人の、子どもの頃からの夢であるクッキー屋さんになることが叶ったエピソードが印象的だった。

 

軽作業では亀の子たわしの梱包作業やクリニックの清掃作業を行っている。

 

また、一般企業への就職支援としてステップアッププログラムもある。

身だしなみや求人票の読み方をレクチャーするなどの取り組みをしている。りんりんりんから直接就職した人はいないが、移行所に移ってから就職した人はいる。

 

余暇活動としては、旅行やイベントなども行っている。

伊藤氏が挙げた3つの強みとして、豊富なプログラム、一人ひとりに合わせた支援、地域とのつながり、それぞれが伺い知れる内容だった。

 

後半の質疑応答では、通所についてや工賃について、職員の数についての質問が出た他に、入所するにあたって最低限できていないとならないことや空き状況についての質問に関心が集中した。

 

定員以外の理由で利用を断ったことはないと仰っていたが、刃物を扱う現場でもあるため他害など感情のコントロールができない方や注意されたことを修正できないと難しい場合もありそうだ。

空き状況については現在は満員とのことで、居心地が良い反面それ故に利用者の流動性がないことは全国的な課題の様子だった。

 

ノルマ達成的ないわゆる作業所の時代から変化して、居場所としてのB型事業所の存在意義が見えてきた講座でした。

一方でグレーゾーンの課題というか、移行所とA型、A型とB型、B型と生活支援、それぞれの中間領域に向けたサービスがなかなかないという難しさはあり、特支の子も支援級の子も通常級の子も同時に存在する放課後等デイサービスが縮図として抱えている課題を改めて認識しました。

 

最後に伊藤氏はりんりんりんで作ったクッキーを振る舞ってくださいました。

繊細なクッキーが丁寧におしゃれに梱包されていて、上品な甘さが幸福感をかき立てる。作った人たちの気持ちが想像できる美味しいクッキーでした。

伊藤さん、ありがとうございました。

(指導員:磯貝佳史)