勉強レストランそうなんだ!!がこれまでに行ってきた自立支援講座。

テーマ毎に自立支援講座の記録をご紹介しながら、放課後等デイサービス指導員が読み返し、さらに質の高い支援につながるヒントがないか探してみようと思います。

ちなみに本記事中で紹介される人名や役職は参照元記事の公開当時のものです。

 

今回取り扱うテーマは『成年後見人と信託』についてです。

成年後見人と信託をテーマとした自立支援講座はアーカイブに4回分の記事が公開されています。

 

第12回 「成年後見制度の概略」(2009.5.24)

http://so-nanda.com/2009/07/01/7/

 

現存するアーカイブの中で一番古い自立支援講座の記録記事です。

「親のための成年後見制度」というハンドブックや申請に必要な書類など、豊富な資料を用いて、成年後見制度の仕組みや内容を出来るだけ具体的に説明した内容だったようです。

 

第25回 「知的障害者が成年後見制度を利用するには」(2011.6.26)

http://so-nanda.com/2011/07/05/30/

 

実際に成年後見人を受任されている講師の方々に対して質問し、具体的な応答を得られる機会だったことが伺い知れます。

成年後見には、被後見人の障害が重い順から「後見」、「保佐」、「補助」の3つの種類(類型)があることさえ、私はこの記事で学びました。

後半の高齢者の虐待防止のお話も、元高齢者介護施設職員として他人事ではなく、権利擁護全体に関わるという指摘にも納得がいきます。

制度そのものを学ぶ重要さと同時に、実際に成年後見人をされている方のお話を伺う機会というのが貴重だったことが伝わってきました。

 

第49回 「もしものときのための“信託”」(2017.10.28)

http://so-nanda.com/2017/11/25/1514/

 

そもそも「信託」とは何なのか。現在ある「信託」の種類。「信託」商品を扱う上での注意点についての、以上3点について書かれています。

 

まず「信託」とは、委託者が信託目的に従って、所有する金銭や土地などの財産を自分あるいは大切な人のために、信頼する人や専門家に託して運用・管理を任せる法的な仕組みだそうです。

信託銀行とは通常の「銀行業務」に加えて、金銭などの「信託業務」と、相続関連業務といった財産の管理・処分に関連する「併営業務」を営む金融機関となります。

 

信託には以下の5つの種類があることを紹介しています。

①後見制度支援信託

②特定贈与信託

③特定贈与信託から派生した商品

④遺言信託

⑤家族信託

 

最後に信託商品を利用する上での注意点についてです。

家族構成や財産背景などによって適合する商品や制度はまったく違うので、「これがお薦めです」と決め打ちで言うことはできないとのことです。

障害者以外の家族、兄弟に対しての考慮も必要で、成年後見制度の利用も見極めが必要。

 

委託者が判断能力を著しく欠いている場合は受託は不可であること。

考えることが出来るうちに、元気なうちに方向性を考える必要があること。

 

などが挙げられています。

 

第54回 「障がい者にとっての成年後見制度」(2019.9.21)

http://so-nanda.com/2019/12/10/2379/

 

講師は、一般社団法人川崎障がい者相談支援専門員協会監事で一般社団法人成年後見センター ペアサポート理事の小嶋珠実氏。

冒頭、「成年後見制度は2000年から始まり20年経とうとしている」と始まり、制度自体は変わらずとも考え方や実践例に変化が生じてきていることを話してくださっています。

高齢者向けと障害者向けではお金の有無に差が多く、実践面での違いも大きい様子です。

 

成年後見制度は認知症や障害のある人が地域で安心して生活していくための道具の一つとし、たとえば高齢者の間では「信託」か「成年後見制度」 かが焦点になります。家族で自由に使える信託のほ

うが成年後見よりいいというわけですが、これはすべて高齢者向けの話だそうです。

障害者にとって成年後見制度は必要だが、使い方を考える必要があります。成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度があるます。前者は、ご本人が判断力のあるうちに、自分で、“誰に”、“何を”、“いくら”で依頼するかを決めて公正証書で契約する、いわば“事前”の対応です。後者は、既に判断力が不十分な人について家庭裁判所が後見人等を審判で専任する“事後”の対応となります。

この記事中では知的障害の場合、任意後見制度はお勧めしないとして、以降は法定後見制度の話になっていきます。

成年後見人の役割は財産管理と身上保護の2つがあります。後見人は本人のお金を守ることと生活を守ることのバランスをとっていきます。

金銭管理だけであれば弁護士に委託契約するだけで十分で、後見人がなぜ必要かと言うと、お金をどう使うかを本人と一緒に考えてくれるからです。

現在は成年後見人の7割が本人とは第三者であるとし、後見制度利用にかかる費用も本人が支払うとは限らず、公的に支出する自治体もあるとのことです。

財産がない人に後見人が必要かという問いには「間違いなく必要」として、お金がない故に生活保護などで交渉をする機会も増え、遺産相続では後見人が家庭裁判所と相談して決めていくことになります。

障害者の中で発達障害の方はコミュニケーションを苦手とする場合も多く、専門職の後見人が間に入ることでスムーズに交渉を進められるというのは想像がつきます。

成年後見制度利用にかかる費用は、まず申立費用に1万円くらい。特別送達等にかかかる郵送費。鑑定費用が今は5万円くらい。報酬は、成年後見制度利用支援事業というのがあって、東京でも全額出る区とそうでない区があるとのことです。

第三者を後見人に専任する場合、専門職後見人、市民後見人、法人後見などに分けられますが、専門職後見人には弁護士、司法書士、社会福祉士、精神保健福祉士などがいて探すこと自体はそんなに苦労しない様子です。

基本的に後見人は替わりません。金銭管理の支援、中でも隔月の障害基礎年金は管理しにくいもの。また関係機関との交渉役、障害特性を踏まえた外界との通訳、ご本人がしたい事を実現するための相談役、言い換えれば当事者の味方となることも後見人の大事な役割であることを考えると、〝親御さんは自分の目が黒いうちに自分の考えを託せる人間を探しておいたほうがいい〟という中盤の一文が際立ってきます。

事務局長先生の書かれた文体に、確かな読み応えと熱意を感じました。

(指導員:磯貝佳史)