勉強レストランそうなんだ!!がこれまでに行ってきた自立支援講座。

テーマ毎に自立支援講座の記録をご紹介しながら、放課後等デイサービス指導員が読み返し、さらに質の高い支援につながるヒントがないか探してみようと思います。

ちなみに本記事中で紹介される人名や役職は参照元記事の公開当時のものです。

 

今回取り扱うテーマは『法律と保険』についてです。

法律と保険をテーマとした自立支援講座はアーカイブに5回分の記事が公開されています。

 

第32回 「知的障害者とその家族のための法律入門」(2012.7.22)

http://so-nanda.com/2012/08/06/52/

 

法律入門と銘打たれているだけあって網羅的に障害者福祉制度、障害者虐待防止法の特徴、障害者差別禁止法における「差別」とは、経済保障、障害基礎年金、生活保護、就労への支援、成年後見制度などの解説があった様子です。

そうなんだ発見教室に参加されていた学生の方が書かれた記事ということで筆致が初々しくさわやかな文体でした。

 

第36回 「法律と制度入門2013年度版」(2013.7.28)

http://so-nanda.com/2013/09/10/88/

 

前述の記事から一年経過する中でも法制度の改正や状況の変化があったらしくライブ感のある記事です。

障害者虐待防止法についての記述では、英語でいうアビューズ(abuse、暴力など深刻な虐待)とマルトリートメント(maltreatment、不適切な対応)の両方の概念を対象としていることで、後者の不適切な対応の判断にグレーな部分があるという指摘がなされています。

英米法から輸入してきたが故にローカライズしきれていない部分を感じて、元施設介護士として腑に落ちるものがありました。

改正障害者雇用促進法の施行で法定雇用率が2%に変化したのもこのタイミングなのですね。平たく言うと100人働いている会社なら2人は障害者を雇っていないとならない計算です。

高等裁判所を含む5ヶ所の裁判所で争われてきた成年被後見人の選挙権の回復など、権利擁護の観点からも重要なトピックに言及されています。

 

第43回 「弁護士さんの上手な活用法」(2015.10.31)

http://so-nanda.com/2015/12/25/117/

 

テーマは「弁護士さんの上手な活用法――知的障害がある人々の法的支援」と題しまして、地域でトラブルに巻き込まれた障害のある方を支援するために設立された一般社団法人、東京エリア・トラブルシューター・ネットワーク(以下、東京TSネット)の山田恵太弁護士と牧田史弁護士に登壇いただきました。

東京TSネットは福祉専門職、弁護士、医師など。障害のある人たちがトラブル(触法・犯罪など)に巻き込まれた時に頼れる専門家集団です。

東京TSネットの活動は主に3つ。個別ケース支援、事例集作成、出前講座です。

  • 個別ケース支援(福祉的な支援が必要と思われる被疑者・被告人の方について支援を行う活動、更生のための支援計画を作ることや更生支援のコーディネーター養成など)
  • 事例集の作成(8つの身近なトラブル事例について、司法、福祉それぞれの立場から検討、加害、被害を問わず掲載)
  • 出前講座の実施(個別ケース支援をするにあたって地域との繋がりの重要性を意識して実施)

また弁護士の役割についても①法律についての専門家であり、②基本的人権の養護者であり、③民事事件での「代理人」、④刑事事件の「弁護人」であることと解説しています。

記事中では実際の2つの事例を通して、障害者の触法行為や犯罪被害にあった場合について、他人事とは思えないものが紹介されています。

最後にまとめとして、①ご本人が直面したトラブルに周囲が早く気づくこと。②トラブルに複合的な視点から対応すること。というトラブルの解決方法で大切な2点が挙げられています。

 

第48回 「知的障害のある人々のための保険について」(2017.7.15)

http://so-nanda.com/2017/07/13/1327/

 

講師は、ぜんち共済株式会社の社長、榎本重秋氏と同社営業統括部長倉持達浩氏。

知的な障害のある人が一般の保険会社の保険に加入するにはいくつもの壁がある。しかし他人の物を壊してしまったりけがをさせたりしてしまったときや、犯罪被害にあった場合の弁護士費用など、保険が適用されれば安心できる部分も少なくないと考えます。

学校や職場などでパニックを起こして他害や物壊しに及んでしまう事例は少なくありません。法的には責任能力を問われずとも、未成年の場合、監督義務者として保護者の責任が問われる場合があります。

もちろん病気や入院、生活トラブルにおいても配慮事項の多い障害を持つ人たちだからこそ、特別に費用がかかる場合もあります。

入院や通院の保険金。そして権利擁護費用保険金といって、ぜんち保険での事例として、就労施設で暴言などの業態を受けた場合、法律相談費用として10,800円の支払い事例、リハビリ施設でわいせつ行為を受けた場合、弁護士委任費用が691,080円支払われた例が紹介されています。

また個人賠償責任保険金においても、自転車走行中に他人にけがを負わせてしまった事例について紹介されています。

ぜんち共済という保険会社についての説明もあり、読み応えのある記事でした。

 

第51回 「『障害年金』をもらい損なっていませんか?」(2017.11.28)

http://so-nanda.com/2018/02/02/1536/

 

この記事では障害年金の受給について扱われています。

国民年金と厚生年金のどちらに入っているかで受給額も異なり、手帳の等級とはまた別で年金額を決定する障害等級も認定されます。

受給事例についてでは、精神障害において受給の対象にならない病名があるので、同じ症状であっても診断書にどのように診断名が記載されるかで不支給になってしまう恐れがあります。

広汎性発達障害・強迫性障害の方が不支給になった事例では、申立書の本人記入欄にできることをたくさん書いてしまったことが原因でした。

自分で記入する場合、できることを多く書いてしまう場合が多く実態と乖離して支給に該当しないということがあるようです。

障害年金受給のポイントについても簡潔にまとめられています。

請求できる年齢は20~64歳。そして初診日をできるだけ明確にしておくことも重要です。

 

初診日の前に保険料を払っていたかどうか。それは厚生年金だったか国民年金だったか。障害が認定されてから受給申請をする現時点で状態はどう変わったか。確認しておきたいところはたくさんあります。

申請に必要な書類も、受信状況等証明書。診断書。病歴・就労状況等申立書について解説されており、他にも住民票、障害者手帳のコピー、戸籍謄本、在学証明書、預金通帳コピー、所得証明書、交通事故証明書などが必要になるようです。

また近年、注目されている発達障害については、診断書、申立書の書き方が要注意とのことで、社会保険労務士に依頼するのも一つの方法であるということでした。

(指導員:磯貝佳史)