2017年7月15日(土)、東京・北区の赤羽文化センターで第48回自立支援講座を開催しました。テーマは「知的障害のある人々の保険について」、講師は、ぜんち共済株式会社の社長、榎本重秋氏と同社営業統括部長倉持達浩氏。同社は、医療保障、死亡保障に加えて個人賠償責任保障や権利擁護費用保障など知的な障害のある人々が対象ならではの少額短期保険業者の草分け的存在です。

知的な障害のある人が一般の保険会社の保険に加入するには、いくつもの壁があります。しかし、他人のものを壊したりケガをさせたりした時、保険が適用されればどんなに助かることか。また、犯罪の被害にあった場合の弁護士費用なども保険で支払えれば金銭的負担が大きく軽減されます。

以下、榎本氏と倉持氏のお話です。

なぜ、障がい者保険は必要なのでしょう?
1981年にAIU保険が障害者の保険の引き受けを開始したが、一部を除いてほとんどの会社は引き受けてはいないのが現状です。

しかし、学校・職場でパニックを起こして人を傷つけたり、物品を壊したりした場合はどうなるのでしょう? 知的な障害がある場合、法律上は責任能力を問われないのですが、未成年の場合は責任無能力者の監督義務者(保護者)の責任が問われる場合があります。

病気や入院の場合はどうでしょう? 医療費はかからないのでしょうか? 差額ベッド代金や付き添いを付けてと言われた場合の付き添い費用、交通費などは医療費以外にかかる費用は必ずあります。

私生活上のトラブルが起きた時はどう解決するのでしょう? 差別、いじめや虐待、消費者被害にあった場合、泣き寝入りしかないのでしょうか? 自分やその周囲の人々だけで解決できなければ、専門家に依頼することもあります。その際はかなり高額な費用が掛る場合も想定されます。

どんな場合に、支払われるのか、具体的に見て見ましょう
<入院保険金> 入院保険金では、インフルエンザから肺炎になり入院した場合、一時金1万円、保険金8万円が支払われた例があります。風呂で転倒して骨折した場合、一時金1万円、保険金60万円支払われた例があります。 

<通院保険金> 通院で支払われた例としては、自転車で転倒し打撲した場合、通院保険金6千円などがあります。 

<権利擁護費用保険金>  ぜんち保険の大きな特色である権利擁護費用保険金ではどのような場合に支払われるでしょうか? 就労施設で暴言などの業態を受けた場合、法律相談費用として10,800円の支払い事例、リハビリ施設でわいせつ行為を受けた場合、弁護士委任費用が691,080円支払われた例があります。 

<個人賠償責任保険金> 個人賠償責任保険金の場合、自転車走行中に他人にケガをさせた場合、3,061,593円の保険金が支払われた例、入所施設の部屋を断続的に破損した場合、1,053,000円が支払われた例などがあります。ちなみに高額支払いの例としては、自転車事故で他者にケガをさせた場合に9,122,910円が支払われた例があります。

また、利用者が破壊した入居施設の生々しい状況が写真で紹介されました。このような場合、個人賠償責任保険金が支払われるのでしょう。

ところで、ぜんち共済とはどのような保険会社なのでしょう?
平成元年、A保険会社に榎本氏が入社したときから障がい者保険との出会いが始まります。平成16年に38歳で脱サラして18年にぜんち共済(株)を設立して20年には小額短期保険業登録を済ませたそうです。

会社の事業概要は小額短期保険業(知的障がい者専用保険、生命保険+医療保険+損害賠償保険+権利擁護保健)となります。現在、加入者は約43,000名、社員数14名、資本金9,460万円。会社設立まで、またある程度軌道に乗せるまで並並ならぬご苦労があったそうです。

現在では、さまざまなイベントへの参加やマスコミでの紹介などで、交流の輪を拡げています。

経営理念は、『すべての出逢いを尊び 心を尽くし 誰にも優しい社会を創造します』、社是は『ともに助け ともに生きる』。になりました。