2017年2月11日(土)、東京・北区の滝野川会館で第47回自立支援講座を開催しました。テーマは、「知的障害がある子供の『性』を考える」、講師は東京都心身障害者福祉センターの山本良典氏。

障害のある児童・者の性の課題を社会マナーやコミュニケーションの課題として捉えていく山本氏の講座はこれまでも何回となく開催してきました。永遠のテーマであり、障害のある人々を取り巻く人々の眼差しや法律の改正などにも影響を受けるテーマでもあります。

障害のある人の性の支援は対人関係を拡げ地域生活を豊かに
障害のある人々の性に関しては優生保護法が存在した時代に比して今日はノーマライゼーションの考え方の浸透などにより認識は変化してきています。

しかし、一方でまだ障害のある人の性的行動は大人になってきた印として認識されるよりもやっかいな事として問題視されることも多いのです。その結果、支援は必要ないといった考え方も根強くあります。

そうした状況の中、山本氏は「障害のある人の性の支援は対人関係を拡げ、地域生活を豊かにする」と主張します。発達段階に応じて支援をすることで大人として生きる力を育て、QOL(生活の質)を高めるのです。

発達段階に応じて山本氏はどのような支援が必要か、具体的に話していきます。

小学校段階は、しつけ又は基本的な生活習慣の確立が大切です。具体的には、男の子と女の子、大人と子供の違い、清潔やトイレの区別と使い方などに関する支援です。

中学部になってからは、女性であれば生理の手当、男性であればマスタベーションについて教えることが必要であり、また親離れ子離れをする時期でもあります。具体的には男性と女性の身体や心の変化や好きな人ができたら、など想定して地域生活の中で気を付けなければならないことなどについて支援が必要です。

高等部段階では。適切な対人関係の取り方や社会マナーやルールをしっかりと覚える時期になります。男女交際やその中で気を付けなければならないこと、もっと踏み込んで性交や避妊、結婚といった事柄も教えていきます。

兄弟や親子であっても異性の場合は発達段階に応じ男女の距離を
また、兄弟や親子であっても異性の場合は発達段階に応じて男女の距離を踏まえた関係をとっていくことが必要と山本氏は話します。ついつい異性であっても兄弟だから、親子だからという感覚で一緒にお風呂に入ったりすることがあります。それはタブーと山本氏は話します。

女親といつも女性トイレに入る習慣がついている男児が成長してついいつもの習慣で女性トイレに入ったら、どんなことになるでしょうか? 特に子離れ、親離れは大切と、山本氏は説きます。

続いて、最近よく聞くようになった「発達障害」についての説明がありました。発達障害の場合、知的な遅れを伴わない人もいるのですが、知的な障害がなければ性の問題は起こらないのでしょうか?

2005(平成17)年4月から発達障害者支援法が施行されました。発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が低年齢において発現するもの、としています。また、発達障害で知的な障害のない人も法律制定後は公的支援の対象になりました。

外見からは分かりにくいこの障害の特徴は、言葉によるコミュニケーションの困難さ、こだわりの強さ、等です。知的な遅れの有無に関わりなく発達障害でももちろんのことながら、性に係わる問題があります。知的な障害のある人々、知的な障害の有無に関わりなく発達障害の人々には性に係わる共通課題があり、しかも十分な支援がされていない現状があります。

知的な障害のある人や、発達障害の人々の特性を踏まえながら、性器いじりもマスタベーションも問題行動ではなく、いずれもプライベートな場所とパブリックな場所の区別をしていくことが大事と山本氏は話しを進めます。究極的には、相手の気持ちを大切にして自分の気持ちも表現してより良い人間関係を築くことこそが性の支援の目標と山本氏は話しを結びました。