2016年11月5日(土)、東京・北区の滝野川文化センターで第46回自立支援講座を開催しました。テーマは「障害のある人の兄弟姉妹の思い」。講師は、弟に障害者がいるいわば当事者の20代の会社員と公益社団法人あい権利擁護支援ネット理事の小島珠美氏を迎えました。

“ホワイトきょうだい”と“ブラックきょうだい”
20代会社員の話は、パワーポイントの資料を使いながらです。自分の経歴、弟さんの経歴、当NPO法人との関わりなどについてまず話がありました。同氏は、2012(平成24)年に電通育英会から助成を受けた事業「発見教室」で中心になって活躍した人物(当時は大学生)です。「発見教室」とは主に教職を目指す学生達が支援学級や支援学校の生徒を対象に、主に夏期休業中にそれぞれ得意分野を活かした“発見授業”を展開するというものでした。

同氏は現在、某信託銀行に勤務している経験を活かして、「信託制度」についても触れました。現職の経験を積んで、信託銀行員としてさらに成長を望む一方で転職もあり得ると語り、いずれにせよ両親が元気な間はご兄弟のことも安心していられると話します。

しかし、彼も今後に不安を持っています。それは

・自分の結婚についての不安
・仕事における将来の不安
・障害のある兄弟が将来どこで暮らすのかについての不安

です。その不安を解消するためには、同じ環境にあるもの同士で集まり、悩みなど共有する場を確保していくことが大切と話します。

同氏は、彼なりの分類ですが、障害のある兄弟を“ホワイトきょうだい”と“ブラックきょうだいに”に分けてみたりしています。前者が障害のある兄弟姉妹に理解を持ち、後者が障害がある兄弟姉妹と自分は別物と考える、という具合です。

また、同氏の職業経験から、障害のある兄弟に不動産の相続はNGと話しました。いずれにせよ相続については両親が元気なうちに対策を練っておくよう勧めます。両親が元気なうちは良いが、両親亡き後が兄弟の付き合いの本当のスタートと捉えて、配偶者やその親戚、そして自分の子ども達の理解を深めていくこと、同じ立場の人々やその支援をする人々を増やすことが大事なことと締めくくりました。

2011年以降、障害者に関する法律は立て続けに施行・改正
20代会社員の話の後、小嶋氏の話がありました。同氏は知的障害のある人々の成年後見人を数多く務め、当法人の講座でも何回となく講師を務めて頂きました。今回は、同氏の話に加えて現在の障害者に関する法律・制度の解説をして頂きました。2010年代の法律の大きな流れとして、

・2011年、障害者基本法改正
・2012年、障害者虐待防止法施行
・2013年、障害者総合支援法施行
・2016年、障害者差別解消法施行
・2016年、成年後見制度利用促進法施行
・2016年、障害者総合支援法改正

立て続けの法施行、改正をあげて、「合理的配慮」や「意思の表明」などについて説明をしました。

2016年の障害者総合支援法改正では、

・「65歳の壁」と言われた福祉サービスから介護保険への移行に伴う本人負担の増加などについて軽減する仕組み作り
・地域での一人暮らしを応援するための自立生活援助支援の創設
・就労定着支援の創設

が改正の大きな目玉だそうです。

障害のある弟がいる、いわば当事者である20代の青年の話と、法・制度に詳しい小嶋氏との講座は、障害のある兄弟姉妹を持つ当事者の不安が浮き彫りになると共に、そうした不安に答えていく法改正が今後も望まれることを強く実感しました。