10/31に第43回自立支援講座、テーマは「弁護士さんの上手な活用法」

去る10月31日、午前9時半から11時半まで赤羽文化センターで、第43回自立支援講座が開催されました。テーマは「弁護士さんの上手な活用法――知的障害がある人々の法的支援」です。参加者はスタッフを含めて約20名。
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障害のある人々が仕事に就き地域で暮らしていくことが当たり前になりつつあります。しかし、そうした中でトラブルに巻き込まれることも少なくありません。そのような時、法的支援をしてくれるのが弁護士なのですが、弁護士と聞くと、「素人は相手にしてもらえないのではないか」、「すごくお金がかかりそう」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
でも実は、弁護士は皆さんが想像している以上に身近な存在なのです。今回は、地域でトラブルに巻き込まれた障害のある方を支援するために設立された一般社団法人、東京エリア・トラブルシューター・ネットワーク(以下、東京TSネット)の山田恵太弁護士・牧田史弁護士にお話頂きました。東京TSネットの構成メンバーは、福祉専門職、弁護士、医師など。障害のある人たちがトラブル(触法・犯罪など)に巻き込まれた時に頼れる専門家集団です。
東京TSネットの活動は個別ケース支援、事例集作成、出前講座の3つ
まず、山田惠太氏、牧田史氏お二人の自己紹介のあと、お二人が所属する東京TSネットの活動についての話に移りました。東京TSネットの活動には3つの大きな柱があります。
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● 個別ケース支援(福祉的な支援が必要と思われる被疑者・被告人の方について支援を行う活動、更生のための支援計画を作ることや更生支援のコーディネーター養成など)
● 事例集の作成(8つの身近なトラブル事例について、司法、福祉それぞれの立場から検討、加害、被害を問わず掲載)
● 出前講座の実施(個別ケース支援をするにあたって地域との繋がりの重要性を意識して実施)
この3本柱を中心に東京TSが目指すものは
● ネットワークによる切れ目のない支援であること
● ご本人中心の支援であること
● 充分な専門性をもった支援の実現
の3点です。
また、弁護士の役割とは、①法律についての専門家であり、②基本的人権の養護者であり、③民事事件での「代理人」、④刑事事件の「弁護人」であること、そして東京にはなんと16,226人もの弁護士さんがいるのとのことでした。
それから2つの事例の紹介。とても人事とは思えない事例で
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事例1:Aさんのケース
(30代女性、愛の手帳4度、特例子会社で真面目に勤務、家族と同居)
スマートフォンの「友だち作りアプリ」を使って知り合った男女に「絶対にもうかるPCソフト」を紹介されて「一緒に消費者金融に行こう」と言われ、100万円を借りて、その男女に渡したところ、その後その男女とは連絡がとれなくなってしまった。さて、Aさんはどうしたらよいでしょうか?
その後のAさんがとった行動は、まず会社の人に相談、その後、就労支援の支援員を通して弁護士に相談。警察にも相談したが「絶対にもうかるPCソフト」の内容確認が出来ないと詐欺として立件出来ないとのこと。その後、男女の住所など調べて弁護士から何回も連絡、初めは開き直っていたが交渉を繰り返して100万円を返還してもらうことが出来た、とのことです。
このケースに学ぶ大事なことは、すぐに相談すること(相談先としては消費者ホットライン、消費者センター、弁護士など)。ちなみに弁護士の相談料は、通常30分で5,400円とのこと。ただし経済的余裕がない方の場合無料で相談出来るシステムもあります。(法テラスの民事法律扶助制度)
そもそもAさんはどうすれば良かったのでしょうか?
「いらない時は、きっぱり断る」、「すぐにお金を払わない」などいくつかのアドバイスがありましたが、なんといってもすぐに身近な人に相談するというのが障害のある人の場合は現実的だと思いました。Aさんは結果的にお金が戻りましたが、自らサラ金などから借金を重ねるケースもあり、そんな場合には自己破産もあり、とのことでした。
また、携帯電話がらみのトラブルはきわめて多く、出会い系、販売系、チェーンメールなどだましの手口は日々進化しているそうで、対応する側も新しい情報の勉強を怠ってはならないそうです。
事例2:Bさんのケース
(20代の男性、愛の手帳3度、一般企業に勤務)

会社での上司との関係でストレスがたまっていたという理由からコンビニで雑誌を盗んで逮捕されてしまいました。もし、逮捕されてしまったらすぐに弁護士を呼ぶことがとても大切。そうはいっても知り合いの弁護士などそうはいません。そんな時は当番弁護士制度を利用することが出来ます。
当番弁護士制度とは、日本弁護士連合会(日弁連)により提唱・設置された制度で、弁護士が1回無料で逮捕された人に面会に行きます。当番弁護士は家族でも本人でも無料で頼めます。家族が依頼する場合は、逮捕された場所の弁護士会に電話します。本人が依頼する場合は、警察官、検察官または裁判官に「当番弁護士を呼んでください」と伝えれば、その場所の弁護士会と連絡がとれ、当番弁護士に会えます。弁護士を呼ぶこともなく、事実を捜査員に正確に伝えることも出来ず、ただ「はい、はい」とうなずいてしまい、調書に押印などしてしまうケースも多く、後日調書の内容訂正を巡って裁判で争うことは大変だそうです。
Bさんは就労支援センターの職員から当番弁護士に連絡が入り、警察に弁護士が派遣されました。弁護士にまずは来てもらうメリットは沢山あります。
● 何が何だかわからない状況を説明してもらえる。
● 自分の側に立って権利の説明や抗議や交渉をしてもらえる
● 釈放に向けた活動をしてもらえる
等々です。
結果的に、Bさんは72時間で釈放され、東京TSが関わって支援体制を考えると共に裁判になることなく事件は終わりました。
刑務所には障害者が多く出所してもトラブルに巻き込まれて犯罪を重ねることも
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刑務所内には障害のある方が多く、たとえ出所しても行き場が無く社会の中でトラブルに巻き込まれて犯罪を重ねる「累犯障害者」については、もと衆議院議員で政治資金規正法違反で実刑判決を受けて刑務所での服役経験もある山本讓治氏が自らの経験から著した「累犯障害者」でもよく知られています。
まとめとしてトラブルの解決方法で大切なことは
● ご本人が直面したトラブルに周囲が早く気づくこと。
● トラブルに複合的な視点から対応すること。
「必ずこれでうまくいく」という方法はないそうです。
近年は障害者をめぐる法改正・整備の動きがあり、障害者虐待防止法や障害者総合支援法などの法律が成立しています。法律だけで解決できるわけではありませんが、より良く使う法律が増えたことは間違いないようです。
最後に、山田惠太弁護士がご自分の携帯番号をホワイトボードに大きく書かれたことがとても印象的でした。この講座に参加された方々にとっての身近な弁護士さんの誕生です。(理事長・福喜多明子)