自立支援講座「私たちはこうして知り合い、結婚し、生活している」、障害者の結婚カップルの話から大きなメッセージ

blog121028-01.jpg10月28日、本年度3回目、通算33回目の自立支援講座が東京・北区の滝野川文化センター(滝野川会館内)で開かれました。今回のテーマは、「《事例報告》私たちはこうして知り合い、結婚し、生活している―― 障害者の結婚カップルに話を聞く」です。今回の開催から「北区ニュース」にも掲載されたこともあってか、参加者は25名。スタッフを入れると会場定員ギリギリの満席状態。講師は、東京都心身障害者福祉センターの山本良典氏。同氏はこれまで「性と人間関係(社会マナー)」の講座を延べ5回担当しています。そして今回、既に結婚生活8年のカップルが話題提供に協力してくれました。
午後2時に講座は開始。コーディネータ役の山本氏が、事前に用意した質問をお二人に投げかけ、お二人が交互に答える形で進行しました。質問の内容は大きく分けて「結婚前」、「結婚後」、「これから」の三つ。その中には「二人のなれ初め」、「相手の好きなところ」といったどこかのテレビ番組でも聞いたことがありそうなお話しから、「どのような生活を送っているのか?」、「子供はほしいか?」などとても突っ込んだ話まであり、それらの質問に対する答えぶりからお二人の仲の良さが垣間見られました。時には会場から笑いが起こる場面もあり、終始和やかな雰囲気で進行していきました。ご夫婦の様子を見るととても幸せそうな様子。ご家族に障害者のおられる方で、結婚に前向きになった方もいたのではないでしょうか。
そういった雰囲気の中で、大学生スタッフとして参加した筆者に特に残った印象は、ご主人の「結婚してからは一人ではないと感じる」という言葉でした。私はこの言葉を聞いて「結婚」には健常者も障害者も関係ないとしみじみ感じました。
blog121028-02.jpg約1時間のお二人の語りが終わり、休憩をはさんで、山本氏の講演。パワーポイントを使用して「知的障碍者の男女交際・結婚の支援」についてお話しいただきました。
同氏が示した支援の根本的指針の中で、筆者が特に引き込まれた内容は、
・「支援」とは障害者自身が自分の存在を認め、自己肯定感や自尊感情を高められるものでなければならない、
・「基本的人権」のニーズとして「障害者の交際や結婚」は認められるべきである、
・「自分の身の回りのことも出来ない人間が結婚など考えらない」という否定的な視点を持つのではなく、「基本的人権から出たニーズをかなえるためには何ができるのか、すべきなのか」という視点が重要である、
・「失敗」することは誰でもあることであり、失敗を認めないことは生活を制限することになり、「失敗する権利」の侵害につながる、
といったことでした。ただ、同時に思い抱いたのは「理想論としてはそうだが、現実的にはそうもいかない面もある」です。
確かに、そうあるべきであるし、そういう社会であってほしいと思いますが、ではその支援は「誰が請け負うのか?」という問題です。私は山本氏のお話に賛同の立場ではありますが、「自分が現在志望している教職を投げ打ってまで支援できるか?」と問われれば言葉を濁してしまうのが現状です。「社会福祉施設」では人手が足りなくて困っているというのを聞くことがあります。それは私と同じように、「福祉の充実は重要」という認識は持っていても、その「福祉に仕事として従事」することには抵抗があるというのが大半だからなのではないでしょうか。
そういうことも問題ではありますが、それ以上に私たちは中学校くらいから「障害者」と呼ばれる人との接点がなくなります。「自ら関わっていこうとしないと、まったく知らない世界のままである」ということに歯がゆさを覚えます。そういったことに社会全体が目を向けるようになるには、家庭・学校での教育が必要なのではないかと思いました。
山本氏の講演終了後、会場参加者との質疑応答がありました。「障害者の出会いの場はないのか?」、「本人が交際・結婚をあきらめているようにみえるがどうなのだろうか?」など、交際・結婚に向けて前向きな発言がある一方、やはり抵抗があるという発言もありました。 同氏によると、障害者に対し「やってはいけない、ダメ」などと禁止されたり、注意されたりする場面が非常に多いために、交際や結婚に関して「言わなくなることが多い」そうです。健常者であってもあれもこれも「ダメ」と言われると、何かを「発信」することに抵抗を感じます。そのこととまったく同じなのではないでしょうか?
「勉強レストランそうなんだ!!」の教室・事務所に戻り、当日スタッフとして参加した他の大学生と雑談していた時、「健常者も障害者も何も違いはない」といった感想をもらした人がいました。確かに私もそのように思います。根源的なところでは何も健常者とは変わりません。ですが、一緒になった時に「何か」が違う。問題は「違うこと」ではなく「違いを持った人が社会で暮らせる」ためには何が必要かということです。「障害を持っている」ことを隠すことは現在でも少なくありませんが、一方で今では理解を求めるためにフォーラムや講演会が各所で行われるようになっています。今度は私たちがそういった集まりに参加し、理解を深め、行動に移すべきなのではないかと強く印象付けられた一日でした。(坂本雅洋)
<理事長より>
今回スタッフを勤めた大学生の感想に、「姉(軽度の知的な障害)に参加を勧めれば良かった。いや、両親に参加してもらいたかった。レジメを読んだだけでは理想論しか伝わってこない。やはり会場でのやり取りを聞いてこそ伝わってくるものがある」と。自立支援講座に賛同する若い人々が増えることは素晴らしいですね。
(詳細レポートがこちらにあります)