「事実」、「体験」、「信念」に裏付けられた強烈なインパクト

大山会長の講演風景
雇用している社員の7割が知的障害者として知られるチョーク製造大手の日本理化学工業の会長、大山泰弘氏を講師に迎えて、平成22年度第6回の自立支援講座を、1月23日(日)に滝野川文化センター(東京・北区)で開催しました。テーマは「『働く幸せ』の実現にむけて」。参加者はスタッフを含めて約50名。保護者、企業、福祉関係、など実に多様です。大山氏のお話は、前半と後半に分けて全90分にわたりました。声高ではありませんでしたが、「事実」、「体験」、「信念」に裏付けられたお話しは強烈なインパクトがあり、一つ一つ胸に迫るものがありました。参加者の一人は講演後、「思わず涙が出た」と話していました。
大山会長は、50年前に2人の知的障害の方を職場に受け入れた時、初めは「知的障害のある人は、施設に入ったほうが守られて幸せだろう。それなのに何で、この人達は厳しい仕事をしたいのだろう」と考えていたそうです。しかし、偶然 法事で言葉を交わしたある住職さんの「人間の究極の幸せとは、人に愛され、褒められ、役に立ち、必要とされることなんです。施設に入って守られることではないんですよ」との言葉に目から鱗の思いだったそうです。
それからは「企業は人を幸せにするためにある」という信念のもと、“思い”と“経営”を両立させるため経営に邁進します。それは知的障害のある従業員を、“お客さん”ではなく戦力にする道のりでもあったのです。例えば数字や文字の読めない人のために、色別の容器と錘(おもり)を用意して色合わせだけで計量ができる工夫をするなど、現場社員の理解力に合わせて全工程を組み上げていきました。そうした工夫の一方で「なんで障害のある人と給料が同じなんですか?」という不満にも応えなければならなかったそうです。
大山会長はこうも言います。「企業は人を幸せにするためにある、まして日本の中小企業の手取り足取りで作業を教える職人文化は文字の読めない人に作業をしてもらうのに役立っているのです」と。これはある外国の記者が工場取材をした時の話で気付いたことだそうです。その記者から出た話とは「日本の職人文化は知的な障害のある人にも仕事を教えていくことが出来る。西洋のマニュアル文化ではそれが出来ない」のだそうです。そうなると、日本の職人文化ってすごいということにもなりますね。共生という要素を内包していることになります。
大山会長は、参加者皆さんに“宿題”も出しました。大山会長が、ヨーロッパ各国の福祉制度を視察して知った「ベルギー方式」こそ、日本が見ならうべき制度と思ったそうです。ベルギー方式とは、雇用の対象になっていない重度の障害者を企業が雇用すると、国がその企業の代わりに障害者に最低賃金を支払うというものです。そうすると障害者は地域社会で自立でき、国は福祉施設でケアするより経費節減になり、企業も彼らに少しでも役に立ってもらえればプラスになり、障害者を抱える家族にとっても良い。三方一両得どころか“四方一両得”の制度になるのです。そのベルギー方式を参考にした日本方式を導入したらいい、それには保護者を含め様々な立場の人が声を上げて欲しい、とのことでした。
なお、さらに詳しいお話は、同氏の著書「働く幸せ」にあります(Amazonなどで買えます)。また日本理化学工業は、障害者雇用推進のためにも、粉が出ない新しい筆記具「キットパス」を次世代の主力製品に育てています。(理事長)